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(東京都渋谷区宇田川町)

「コロナ」禍も関係なく、若者でごった返す街「渋谷」。
前回は旧花街「円山町」や繁華街の道玄坂「百軒店」の残り香を求めながら起伏の富んだ街を歩いてきた。
今回は若者が闊歩する「センター街」周辺、正直云うと人通りの多さに辟易してしまいそうだが、食わず嫌いも善くないだろう、久しぶりに歩いてみることにした。



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109前交差点から東急本店へ

109交差点から東急本店への通りは微かに上り勾配がある。


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東急本店 向こうにあの曰くつきの建物が見える

その頂上にある東急本店は昭和42年に開業、この場所は元々小学校の敷地だった。
後に駐車場だったスペースが「文化村」となる。
背後が松濤、神山町の高級住宅街で、明らかに客層としてそこで住む人たちを見込んだ立地といえる。

東急本店の先に見えるのは、平成19年に起きた爆発事故の現場「シエスパ」の建物。
あれからもう10年以上も経つのか、負の遺産のつもりなのかいまだに残っている。
私事ながら、実は渋谷に5年ほど勤務したことがあり、仕事中ちょうどリアルタイムにデカい爆音がこだましたもので、その後、現場近くを通りかかっていたら凄いことになっていたのをこないだのように覚えている。

さて、今回はそのシエスパの方ではなく、逆の方向へ向かうことにする。



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宇田川町 暗渠になっている通り

そんなわけで宇田川町に入る。
町名に"川"の字が入っているように、宇田川がこの通りを、正確には地下を流れている。
つまり、暗渠なのだ。


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宇田川町 歩道の縁石が護岸の跡

通りは蛇行しており、歩道の縁石は護岸の名残りのように見える。


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渋谷センター街 宇田川暗渠はここで井の頭通りへ流れ込む

宇田川暗渠を辿ると、ここで井の頭通りにぶつかる。
この後、宇田川は井の頭通りの下を流れる。


スクリーンショット (77)

上の地図を見ると、井の頭通り周辺は谷間になっており、そこに宇田川が暗渠という形で流れている。
宇田川は井の頭通りを出て、これまた暗渠の渋谷川と合流する。


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昭和29年ごろの渋谷センター街付近 出典『盛り場の歴史地図』より)

上の写真は昭和29年の渋谷センター街付近を写したものである。
大通りに商店が建ち並ぶ一方で、その内側には住宅が多く見られる。


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昭和33年のセンター街入口付近(出典 上掲書)

宇田川は昭和中頃にはすでに暗渠化されていて、小さい通りだっただったが、昭和33年頃には区画整理が行われ、道幅も拡張されている。
その頃には東京五輪開催が決定しており、それに向けて闇市などごちゃついていた渋谷の街並みを区画整理によって現在の街割りにしたものと考えられる。



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宇田川沿いから伸びる坂の数々 右2枚はスペイン坂 左上はオルガン坂 左下は間坂

渋谷川と宇田川の間に台地ができており、井の頭通り沿いから細かい坂道が何本も通っている。
渋谷ロフトの脇にあるのは「間坂」だが、この名が付いたのは平成に入ってからで、由緒ある坂道というわけではない。
恐らくはビルとビルの間を通るからという理由なのだろう。
しかし、その脇に佇む道祖神はいつごろからあるのだろうか。


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オルガン坂

そして、特に有名なのがスペイン坂だろう。
パルコから階段坂を下って、”く”の字の形で折れ曲がるように井の頭通りへ下り坂が続くこの坂、名前の通りに南欧風の店構えが並ぶ。


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井の頭通り 西武百貨店が両側に

井の頭通りの両側には西武百貨店が向き合っている。
2つの棟を繋いでいるのが地上の渡り廊下である。


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西武百貨店のフロア案内 地下では連絡通路が通っていない

ところがフロア案内を見ると、地下では連絡通路でつながっていないのがわかる。
地下は暗渠化している宇田川が今でも流れているので、連絡することが不可能なのだ。



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山手線高架下 宇田川の暗渠はトンネルを通って渋谷川と合流する

井の頭通りの下を流れる宇田川はこの山手線の高架下を通り、渋谷川と合流する。
このトンネルの形、道路を通すためのではなく、橋として造られたものなのだろう。


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のんべい横丁 高架下に続く闇市の名残り

高架沿いに進むと、情緒豊かな飲み屋横丁に入る。
渋谷は戦後、駅前周辺に巨大なマーケットが広がっていたが、昭和26年の露店整理令で露店を構えていた何軒かが渋谷川べりのこの地に店を構えたのが、この「のんべい横丁」のはじまりだ。


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のんべい横丁 昼間は閑静な佇まい

谷底に残る昭和の残滓が本領を発揮するのは、日が暮れた後だろう。



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渋谷川 渋谷駅手前で地下に潜り、暗渠と化す

さて、最後に渋谷川だが、渋谷駅の南でいきなり開渠となる。
渋谷川は麻生辺りで「古川」と名を変えて麻布十番で直角に東流することになる(麻布の項参照)。
数年前までは川に沿って東急東横線の高架が走っていたものだが、それも撤去され、街並みもすっかりと変わってしまった。
現在は、桜丘の再開発が始まり、渋谷の街の変貌は終わりを見せることなく進行中である。


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夜ののんべい横丁

そんな中で変わらないのが、やはりここ。
渋谷散策の最後はここで一杯と決め込みたい。



初めての人は入るのをためらいそうな店構えだが、思い切って入ると店の方も他の客も運良く受け入れてくれる。
こういう場があるから、渋谷はまだ捨てたものではないんだよね。




(訪問 202003)