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(奈良県橿原市八木町)

前回取り上げた「今井町」から徒歩圏内に、もう一か所古い街並みが残っています。
その「八木町」が今回の主役。

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近鉄のターミナル駅「大和八木」の南東にある北八木町・八木町・南八木町、さらにJR桜井線の南側にある小房町が今回の「八木町」のエリア。
ちょうど近鉄とJRが交差する箇所があるが、それを中心に「今井町」と対角向かいに位置しています。
そして、距離的にも十分徒歩圏内なのがミソで、両方の街並みを1日で回ることが可能です。


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国土地理院地図と昭和40年代の航空写真を合わせて載せてみると、大和八木駅の東南に区画された一角があり、屋根がある町家が密集しているのが分かります。
その集落の中心を東西及び南北に伸びる通りがあり、その2つの通りが交わる箇所を中心に街並みが広がっている形。
その2つの通りはそれぞれ「横大路」「下ツ道」と呼ばれて、古代から続く街道でした。
現在では近くの大和八木駅で近鉄電車が東西と南北で交差しているわけで、今も昔も交通の要衝としての地位は変わっていなかったわけですね。
また、地図を見ると水路を示す青い線が見えますが、恐らくこれは環濠の名残だろうと思われます。
「八木町」も「今井町」と同様に環濠を張めぐらせていたとされています。



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横大路の町並み

ブログでは「今井町」を先に取り上げたが、実際には順序が逆に訪問しています。
新幹線で京都まで行き、そこから近鉄特急に乗り換えて50分ほどで大和八木へ。
長旅の疲れを駅前の喫茶店で癒した後に、駅前を出てから東へ歩いていくわけだが、こうした古い街並みにさっそく出くわします。


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横大路の町並み

東西に伸びている「横大路」、古代は都から大陸の玄関港だった摂津の湊を結んでいた街道でした。
江戸時代に入ると、伊勢に通じる「伊勢街道」としてお伊勢参りで賑わいました。


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札の辻(横大路と下ツ道の交差点)

やがて横大路はもう一つの街道「下ツ道」と交差、その交差点だった「札の辻」が「八木町」の中心。
「札の辻」は”札”の字があるように高札場も兼ねていました。


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札の辻「平田家」

札の辻には2つの大きな町家が向き合いながら建っています。
18~19世紀にかけて建てられた「平田家」はもともと旅籠で、「八木町」が宿駅として繁栄していたことが分かります。
現在は「八木札の辻交流館」という名前で、通常は一般公開しています(今回はコロナ自粛で見ることができなかった)。


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札の辻「西の平田家」

向かいにある「西の平田家」もまた元旅籠で、「きわらや」という屋号でした。




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横大路の町並み

札の辻から東にも街道筋らしい重厚な街並みが残っています。




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下ツ道の町並み

一旦「札の辻」に戻って、今度は「下ツ道」を北へ。
通りがまっすぐではなく、町家が鋸刃状に並んで建っているのが興味深い。


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下ツ道の町並み

ちょうど正面に近鉄電車の踏切があり、特急電車が通りかかっているのを目撃。
「下ツ道」はこれよりさらに北へ進むと途中で「中ツ道」「上ツ道」と名を変えながら平城京、さらに平安京と古都に到達します。


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下ツ道の町並み

角のカーブミラーにも古い街並みが映っているのがいいですね。
因みに、映っているのは登録有形文化財に指定されている「河合家住宅」で、搾り油屋を営んでいたといいます。


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下ツ道「河合源七郎家住宅」

こちらも登録有形文化財に指定されている「河合源七郎家住宅」。
前述の「河合家」の分家筋でしょうか。


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下ツ道の町並み

近鉄電車の踏切手前まで古い街並みが続いています。
正面に走っているのは大阪と伊勢を結ぶ近鉄大阪線で、かつての「横大路」こと伊勢街道に並行している形になっているわけですね。


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下ツ道の町並み

今度は札の辻から南側へ。
途中、古い佇まいを残す細い路地に巡り合います。
観光案内所でいただいたパンフレットの扉写真に使われている風景です。



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下ツ道の町並み

街道沿いに並ぶ切妻式平入で出格子や虫籠窓を持った町家、前回の「今井町」にも共通してしていますね。
しかし、「今井町」が重伝建指定を受けて注目を集めている陰で、こちらはその陰に隠れている感がしますね。


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下ツ道の町並み JR畝傍駅付近

南に進んでいくとまたしても踏み切り。
こちらはJR桜井線、近くに畝傍駅があります。


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下ツ道の町並み

踏切を超えてさらに南に進みます。
この辺りから「小房町」に入りますが、古い街並みが続いていきます。


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下ツ道の町並み

この先には「おふさ観音」が控えていて、その門前町という顔も見せています。


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下ツ道の町並み

「今井町」はよく知られていますが、こちらは知られていない分、実際に歩いてみて意外に濃い町なのかと驚かされます。
観光地ずれしていない分、ナチュラルな形で町家が保存されているのは好感が持てますね。


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おふさ観音

おふさ観音の門前に到着しました。
正式名は「高野山真言宗別格本山観音寺」という仰々しい名前ですが。


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おふさ観音

境内に入るとおびただしい数の薔薇🌹の苗が。
シーズン前だったので蕾で止まっていますが、一面咲き誇る光景は見事でしょうね。

「今井町」の陰に隠れがちな「八木町」の古い街並み。
「今井町」からも徒歩圏内なので、1日で両方歩くのがお勧めです。
橿原市には橿原神宮や神武天皇の墓とされる畝傍御陵など見所が多いので、1日がかりがいいでしょうね。


(訪問 202005)

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大和八木に着いて立ち寄った純喫茶。