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(千葉県香取市佐原)

利根川水運により北総の商都として発展した佐原。
川越と並ぶ「小江戸」で通常なら大勢の観光客で賑わい、普通なら小野川沿いと香取街道沿いを見て、観光船に乗って終わりというコースですが、今回はさらに一歩踏み込んでみたい。
明治25年に佐原市街が大火に見舞われ、防災の一環も兼ねて土蔵造りの建物や近代建築が次々と建ち並ぶように。
明治31年に成田鉄道(現在のJR成田線)開通を境に利根川水運が衰退しますが、それとは裏腹に佐原は戦後まで最盛期を迎えます。
そんな感じなので当然人が集まり、そして遊里の類もあるわけで、昭和30年の『全国女性街ガイド』でこう記述されています。

釣師がよく遊ぶ。それだけに地味で年増で三十名。花代は二百五十円、次時から二百円、美形更になけれども千葉県にめずらしくしっとりした色里である。

僅かこれだけの記述ですが、佐原には花街が存在していたとわかります。
その痕跡ですが、実は町並み保存地区と目と鼻の先、というか隣接しているわけで、今回はその辺も合わせて前回の続き。



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香取街道を忠敬橋から東側。
突き当りには煉瓦造りの「三菱館」......の筈ですが、どうやら工事中らしく養生で覆われています。
大正3年に川崎銀行佐原支店として竣工、昭和18年からは三菱銀行佐原支店として平成元年まで現役でした。
辰野金吾を思わせる青銅製のドームと白い花崗岩の装飾の赤煉瓦造り、これだけの建物が利根川水運が衰退された後にできるのですから佐原の隆盛が続いていた証でしょう。
手前にある土蔵造りは「中村屋乾物店」、大火直後の明治25年に建てられたもの。
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2階の観音開きになっている扉は通常は開けっ放し。
扉には「進物道具」「勝男節」など扱い商品が書かれています。


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佐原はまた、看板建築の宝庫。
古くから市が開かれていたとあって、商店が建ち並んでいましたが、大火後はこうした洋風の看板建築ができるように。


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特に三菱館の向かいにある「蜷川家具店」は秀逸。
カーブに沿って出桁造りの商家と並ぶ光景がいいですね。



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反対側から見ると、これまた複雑な形なんですね。


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さて、小野川沿いを北に入っていきます。
対岸に見える「正上」さんはご当地名物”筏焼き”で有名な佃煮の店で、何と天保3年の建築。
店前には「だし」という荷上げ場が残っています。


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こちらは明治33年と大火後の建築である旧「油惣」。
寛政年間に醸造業として創業した老舗でした。
小野川沿いには酒造業や醤油味噌などの醸造業が軒を連ねていたそうです。



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「木の下旅館」さん、旅館をやめてトンカツ屋さんになっていました。
入りたいのは山々なれど、先程そばを食べたばかりでお腹には入りませんで(苦笑)


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市松模様のタイル張りが綺麗な商家も残っていました。
佐原にはけっこうタイル張りの建物が残っています。


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そして赤ポストも。



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カーブしながら流れる小野川に沿って景観のシークエンスが保たれています。



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さて、駅に戻りましょうか。
小野川沿いの町並みから枝分かれしている裏道に入っていきますが、実はこの辺りがかつての花街だそうで。



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花街の名残と言える飲み屋の看板が所々に見られます。


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佐原の商人も船乗りも、そして街道からの旅人も、ここで羽目を外してきたんでしょうね。



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ドアの上には「風俗営業(料理店)」という鑑札が。



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突き当りには見越しの松が植えられた旅館。
元から旅人相手に営業したものか、遊里からの転業なのか。


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数年前にはバラック建ての小料理屋さんやら料亭のようなのも残っていたようですが、いずれも姿を消してしまっていまい、往時の名残は数少なくなっている様子。


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果たして夜になるとどんな風景になるんだろうかと想像したくなります。


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こちらは料亭でしょうか。


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そして、遊里の近くには銭湯あり。
どうやら、こちらの細い道の奥にあるようです。


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どうやら現役のようです。
それにしてもこの立地に銭湯、ガチ地元民しか利用しないのかも。
入りたかったんですけどね。

コロナ自粛も解かれ、少しずつ観光客の姿も見え始めてきた佐原の街並み。
あやめの咲き頃こそ過ぎた感じがしますが、街並みを堪能するだけでも損はさせない所です。

(訪問202006)